形態安定シャツWrinkle-free shirt【ワイシャツの百科事典】

  • 形態安定シャツについて

  • ■形態安定加工とは

    洗濯後干しておくだけでシワが伸び、アイロンが不要(ノーアイロン)という事で一世を風靡したのは1993年頃から。
    当初はT/C(ポリエステル/コットン)の比率50:50の製品しか無かったのだが、技術開発が進み綿100%のものも出来るようになった。
    ちなみに、T/Cの“T”は、東レと帝人が製造するポリエステル繊維の商品名【テトロン】に由来。
    W&W性(ウォッシュ&ウエア性)とは、洗濯後のしわの残り具合を表す指標で、W&W性5.0級をアイロン掛け後のシワのない状態とし、シワカット率100%。形態安定加工と言われるものは、3.2級以上でシワカット率50%以上。4.0級以上は、シワカット率90%以上となる。ちなみに形態安定よりも性能が落ちるイージーケアシャツで2.5級。

  • ■代表的な加工は2種類

    1.VP加工(VaporPhase):東洋紡
    縫製されたシャツにホルマリンガスを浸透させ、強固なメチレン結合を作ることにより形態を安定。

    2.SSP加工(SuperSoftPeachPhase):日清紡
    生地を液体アンモニアと樹脂で加工・縫製。その後高温で熱処理(ポストキュアー)をすることによって形態を安定させる。

    全般として、加工の良し悪しで形態安定性が変わるためメーカー間で差があるのと、縫製不良も形態安定で残ってしまうため、高い縫製技術が必要とされる。

  • ■形態安定加工シャツの種類

    ”綿100%の風合いでなければ嫌だ!“ と言われる方は多い。主婦にしてみれば、アイロン掛けやクリーニング代を捻出したりと、頭の痛いところだ。しかしながら最近では、綿100%の風合いと形態安定性を兼ね備えたシャツも多く出てきている。

    ただ、綿の比率が高ければ高いほど形態安定性は低くなるため、乾いたあと小じわが気になる方は、アイロン掛けが必要なことも。アイロンの掛けやすさは普通のワイシャツの比ではなく、軽く部分的なアイロン掛けでも十分である。

  • ■形態安定シャツの洗濯

    洗う前に洗濯絵表示をチェック。
    ワイシャツの前立ボタン(フロントボタン)を留めて網目の大きいネットに入れて洗うと、他の洗濯物に絡まず生地の傷みも軽減される。
    入れる前につけ置き洗いや、衿や袖口に塗るタイプの洗剤を添付すれば、汚れ落ちがグ〜ンとアップ。

    洗剤はどれでもかまわないが、最近はシワを防止したりシワを無くす洗剤や柔軟剤がでてきており、結構効果があるので試してみる価値はある。ただし形態安定の機能を発揮させるためには、のりづけはしないのが原則だ。

  • ■形態安定加工シャツの脱水・干し方

    形態安定加工シャツは「濡れ干し(ドリップドライ)」が基本。滴が垂れるくらいが理想で、水分の重みでシワを伸ばすように作られている。なので脱水はしない方が良いのだが、どうしても滴が気になる方は15秒程度の脱水に押さえ、変なシワが付く前にすぐに干すのが理想。
    洗濯機から取り出したら、ザッとふりさばき、シワを伸ばしながら形を整えてつり干しに。(ここが重要!!)
    ハンガーは、針金ハンガーではなく、プラスティック製の少し厚みのあるものがおすすめ。袖や本体の重みが効率的に掛かり『水の重みでシワを伸ばす』性質をフルに活用できる。
    干す場所は、絵表示の確認が必要だが、大抵のワイシャツは風通しの良い「陰干し」が理想。
    家庭用乾燥機を使うと、形態安定加工の機能がいっそう発揮される。業務用のコインランドリー乾燥機は高温なので早めに取り出すことをお勧めする。

  • ■形態安定加工シャツはクリーニングには不向き

    シャツはクリーニングに出すモノだと考えている方は、形態安定かどうかは問題にしないで購入する場合がほとんど。“どっちみちクリーニングにだす”のだからと。
    通常のクリーニングは、半乾きの状態で高圧プレスし強制的にアイロン乾燥。これが形態安定シャツの衿とカフスにダメージを与えている。
    形態安定シャツは、生地がシワにならないように加工されているだけでなく、衿やカフスに芯地と接着されてシワが出ないように加工されている。この芯地の糊は高温に非常に弱く、「バブリング」といって部分的に剥がれて気泡ができたり、衿が曲がり反り返ったりするなどのトラブルが発生する場合がある。また芯地は収縮率も高いため、さらに問題が大きくなる。
    形態安定加工ワイシャツは、家庭洗濯を基本にして作られているため、クリーニングに出すことは、シャツへの負担が高く寿命を縮めるのでお薦めしない。

  • ■形態安定加工シャツにアイロンを掛ける場合

    メーカーによっては形態安定(形状記憶)加工の掛かり方が違うので、どうしてもアイロンを掛けるのなら高温はNG。洗濯絵表示を参考にしなければならないが、ポリエステルなどの混紡品は、高熱に非常に弱い繊維のため中低温でそっと掛ける。また衿や袖口に使われている糊は高温に弱いので、温度が高ければ高いほどキッチリとした形態安定性が徐々に損なわれてしまう。なるべくならアイロン掛けをしないことをお勧めする。

  • 形状記憶シャツについて